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日本のモノづくりの将来

深層 第1回

2016年07月01日

所長の眼

所長
神津 多可思

 古今東西の歴史を振り返ると、大事件がある時期立て続けに起こり、社会が大きく変わったようにみえる例が多い。しかし、後知恵としては、実はそれ以前からもっと小さな出来事が少しずつ積み重なり、それらがある時、一気に大きな動きに繋がったという姿も浮かび上がってくる。

 これからの日本のモノづくりビジネスについても、同様のことが言えるかもしれない。昨今、モノづくりに関わる新しい動きとして、Big Data、 IoT、 AI、VRといった横文字のキーワードが盛んに取り上げられている。モノづくりを離れても、SNS、FinTech、Shared Economyといった言葉を聞かない日はないぐらいである。
 
 今のところ、これら一つひとつが日本のモノづくりビジネスの環境を直ちに激変させるようにはみえない。しかし、こうした動きがさらに盛り上がり、もっと相互に作用するようになった時、一体何が起こるだろうか。

 私たちはモノ無しには生きていけない。だからモノの需要が無くなることはない。しかし、衣食住がある程度足りるようになると、マーケットの拡大はサービス分野が中心となる。上述のキーワードも、モノそのものというより、モノを通じて提供される情報のサービスに関連したものが多い。

 さらに、膨大な情報の処理が低コストでできるようになると、個人あるいは企業がモノを占有する必要性が低下していく。不便を感じることなく、モノの共有ができるようになるからだ。

 そうした変化の中では特に先進国で、「製品をより良くしていけば、ビジネスも拡大する」というストーリーが通用しなくなる可能性がある。人口の高齢化という要素を考えれば尚更そうだ。それが産業ごとに、あるいは製品ごとに、ある時点で一挙に現実のものとなるかもしれない。今観察できる一つひとつのピースが、将来のどんな大きな動きに繋がっていくのか...。目を良く凝らす必要がある。
 
 今年4月に所長を拝命し、当研究所はこの6月で開所から7年目に入った。引き続き、日本のモノづくりビジネスの置かれた環境とその将来を見極める努力を重ね、広く議論をしていきたい。

尾灯_20151215_500.jpg(写真) 中野 哲也 PENTAX K-S2使用(A-HDR撮影)

神津 多可思

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※この記事は、2016年7月1日に発行されたHeadlineに掲載されたものを、個別に記事として掲載しています。

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